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/dev: フィドルスティックスのVGU(ビジュアル・ゲームプレイ・アップデート)最新情報

クロウストーム、心を不安にさせる不気味な動き、カゴの中の魔物…もうすぐ、ヤツが来る…

Dev作者フィドルスティックスVGUチーム
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皆さんどうも!プレイヤー投票で選出されたフィドルスティックスのVGUもいよいよ絶賛本制作中となったので、この機会に現在までの進捗を細かくお知らせしようと思い、記事を書くことにしました。チームは今年の比較的早い段階のリリースを目指し、この怪物を相当恐ろしく仕上げてきていますから、本記事は気の弱い方にはお勧めできないかもしれません…。本記事では基本的に新フィドルスティックスのアニメーション、VFX、モデルなどを紹介していきます。ネタバレ覚悟でもう一度言っておきますが、ここから先は恐怖、そして濃密な情報が満載なので、その点どうぞご留意ください…。

古代の邪悪、顕現

前回の投稿を見逃した方のために補足しておくと、フィドルスティックスのアップデートは「LoL最恐のチャンピオンを作る」という目標のもとに進められています。 

まずゲームプレイ面では、「恐怖」をメインコンセプトとしたスキルセットを持つLoL屈指の奇襲型チャンピオンにすることを目指しました。要するに、ターゲット指定のステータス変化スキルだけでは足りないということです(注:別に削除したわけではありません)。そこで今回のアップデートでは、フィドルスティックスの代名詞的スキルである「クロウストーム」を軸とした新しいゲームプレイメカニクスを構築しました。そのひとつが、身を隠して奇襲の機会を伺う(あるいは作り出す)方法を増やした点です。また絶妙のタイミングと位置取りで奇襲できた時には戦闘を有利に進められるようにする点も強く意識しています。

熟練のフィドルスティックス使いなら、標的のメンタルをグラグラと揺さぶり、パニックで本物と偽物を区別できなくなるほどの恐怖に陥れることができるでしょう。

前回の開発ブログで紹介したアイドル時の仮アニメーション — 最新版は下にあります

ストーリー制作の初期段階では、チームで「新生フィドルスティックスの出自、所属、種族は何であるべきか?」をブレインストーミングしました。リーグ・オブ・レジェンドの世界を見渡してもフィドルに似た存在はいないので、「どこにでも出現しうる存在」がいたとして、その存在にフィドルスティックスという名を与えたらどうか?と考えました。もし死霊使いによって生みだされた凶悪な化け物だったら、その名前に「フィドルスティックス(直訳すれば、くだらない/ナンセンスな棒)」は選ばないでしょうし、同様に黒魔術師が「フィドル恐怖卿」の魔導書を解読して生み出した…というのも話として締まらないですから。

要するに「フィドルスティックス」という響きは、キャンプの夜、焚き火を囲む子供の一人が友達を怖がらせるためにでっちあげたお化けのような名前なのです。

オーンやタム・ケンチなど悠久の時を生きてきたチャンピオンは、数百、数千という寓話・物語に登場します。フィドルスティックスもまた、彼らと同格になり得る存在です。神が不在の時代から人間を襲い続けてきた彼が童謡や童話に登場したり「生きたカカシ」という民間伝承になっていたりしても不思議はありません。モンスター?豊穣の神?あるいは超自然的遺物…?何者かに操られているのか、生き物なのか?そこに正解はなく、「フィドルスティックス」という名にはそのすべてを一気に想起させる力があります。出自不明の古き悪霊。長いあいだその姿を見た者はおらず、やがて「戒め」だったものは物語となり、物語は神話となり、神話は子供向けの童話となり…そして今、再び姿を現すわけです。

しかしフィドルは(出自は不明ですが)人間とは全く異なる存在であり、内臓も、考えるための脳も、発話するための声帯もありません。そんな存在が出す声は、人間の声というよりもその模倣のような響きであるのではないでしょうか。カカシが人間の姿を模倣しているように、彼がこれまで出会ってきた、または死に追いやった人間の声と似たような響きをしているかもしれません。この方向性にはチーム一同まだ大きな可能性を感じており、音声収録の時には何らかの形で反映させたいと考えています。

フィドルスティックスのコンセプトアート最終版

フィドルスティックスのコンセプトアート最終版

ビジュアル面では、フィドルスティックス恐怖を糧とする邪悪な存在ですから、暗闇に歩み入った者が出会ってしまった時に恐怖するルックスを目指しました。

それではお待ちかね、新情報です!果たしてチームはどんな風にコンセプトアートをゲーム内のチャンピオンへと落とし込んだのでしょうか?なお、以下の内容はすべて開発中バージョンですので、その点ご留意ください!

「怪物性」を組み立てる

工程1、工程2。簡単ですね!

工程1、工程2。簡単ですね!

Jason “00Y00” Namgung、キャラクターアーティスト: キャラクターのモデリングには2つの工程があります。まず球体を作って、次に完成。簡単ですね! 

と、冗談はこれくらいにして真剣にお話すると、私がフィドルスティックスのプロジェクトに参加した段階ではまだコンセプトが製作中の段階で、作業を進めるには複数の疑問を解決する必要がありました。いくつか挙げてみると、「ゲーム内シルエットをどう表現するか?」、「動きはどんなふうか?」、「3Dモデル化した時、問題を引き起こす部位はあるか?」「各部位のサイズ比率はどうするか?」などです。これらの疑問を解決するため、まず私はざっくりとプロキシ(代用、Proxy)モデルを作り、ゲーム内に組み込んでみました。

プロキシモデル

プロキシモデル

こうして本制作に入る前のテスト/検証をすべて完了して本制作に入ると、ハイポリモデルの制作がスタートします。ハイポリモデルとはポリゴン密度の高い3Dモデルのことで、デジタル空間で彫刻(スカルプト、やっていることは粘土彫刻と非常に似ています)して作成します。ここではまず、ごくシンプルな形状のパーツを「フィドルらしい動き」が可能になる複雑な構造のパーツで置き換えていきます。3Dアーティストはここで徹底的にディテールにこだわるのが一般的なのですが、LoLの場合はあまり凝りすぎず、大~中規模のディテールを足すだけのシンプルなスカルプトを制作するほうがその後スムーズに開発を進められるようになっています。

ハイポリモデル

ハイポリモデル

こうしてハイポリモデルが完成したら、次は綺麗に整えたプロキシモデルに戻り、このモデルを下地としてゲーム内に組み込む最終版モデルを作り込んでいきます。これは時間を節約し、私が精神衛生上すこやかに仕事できるようにするため…じゃなく、効率的に業務を進めるためです。コホン。実は私は元々スカルプト専門でペイント経験があまりないので、ゼロから作るのではなく、ハイポリモデルにベイクされた各種マップ(法線、アンビエントオクルージョン、曲率など)を流用した上で、キャラクターのテクスチャーを詰めていく手法を取っているのです。その後は専用のペイントプログラムを開いてLoL上での見た目を良くする「本番」作業を進めていきます。

フィドルスティックスのテクスチャー(開発中)

フィドルスティックスのテクスチャー(開発中)

あとはひたすら席にかじりついて、見た目が良くなるまでペイント作業を繰り返すだけ…。これでもまだ未完成バージョンです!

フィドルスティックスのモデル最新版(変更になる可能性があります)

フィドルスティックスのモデル最新版(変更になる可能性があります)

悪夢はもうすぐ皆さんのもとへ…。 

超自然的人形のリグを作る

Dawon “Riot WONY” Lee、テクニカルアーティスト: ここでテクニカルアーティストである私が担当するのはリグの制作です。「リグ」とは3Dモデル内に置くもので、骨格(ボーン)とコントロール(それを動かすためのコントローラー)から構成されます。アニメーターが3Dモデルに命を吹き込む(アニメーションを付ける)にはキャラクターの特定の部位を動かせるようにしなくてはいけませんよね。リグはそれを可能にするものだと思ってもらうと分かりやすいかもしれません。 

私がチャンピオンのリグを制作する時は、通常「このキャラクターの自然な動きとはなにか?」を考えるところからスタートします。たとえばユーミの顔用リグを作る時は自然で可愛らしい表情が出せるように心がけましたし、セナの霧の衣用リグを作る時は流れ方が自然になるよう配慮しています。しかしフィドルスティックスは突き詰めれば「人形」であるため、別のアプローチを取ることにしました。怪物や幽霊らしく、動きの不自然さと自然さを両立することを目指したのです。 

また担当アニメーターから「フィドルスティックスが移動する時に頭を不自然に揺らすアニメーションを付けたらどうか」という提案があり、自分もとても良いアイデアだと思ったので、アニメーターが複数のジョイントを自然に連動させてアニメーションさせられるように社内で「ジグルリグ」と呼んでいるリグ要素を追加しました。ただしこれは通常マントや尻尾などのパーツに使う要素で、過去にチャンピオンの頭やアゴに組み込んだことはありません。このため狙い通り動作するか分からなかったのですが…結果的にはこれが頭とアゴの動きにチームが求めていた「不自然さ」を生み出し、不気味さを高めることができました。

フィドルスティックスが今回の新コンセプトで特に大きく変化した部分に、長く伸びた右腕と細長く鋭い爪があります(いずれも不気味さを際立たせることを目的としています)。これを受けて担当アニメーターは、フィドルスティックスの歩きアニメーションを「爪を引きずりながら敵に向かっていく」ようにして長い右腕の不気味さを強調したいと考えていました。ホラー映画で凶悪な武器を引きずりながら主役に歩み寄ってくる悪役がいたら…ものすごく不気味ですよね。

そこで私は、右腕自体が巨大な武器に見えるようにすること、そしてその武器が身体の進行方向に沿って動くようにすること、それでいて不気味かつ不自然な印象を醸し出すことを目標に掲げて最善策を模索していきました。こうして右腕に組み込まれたのが「ドラゴンターンテック」と名付けた機能で、これが腕と身体の動きの流れを自然にしながらも不気味さを足す役割を果たしています。アニメーションだけ比較するとわずかな違いに見えるかもしれませんが、ゲーム内で見るとぐっとリアルさが増していると感じてもらえると思います。

生命を持たない対象に命を吹き込む

Luke “LukeHop” Hu、アニメータ: 初めてキャラクターデザインを見た瞬間から、こいつはアニメーションを付けるのが大変そうだと確信していました。アニメーションを付けるには対象を深く理解しなくてはいけません。フィドルスティックスはカカシの姿で古代から存在し続ける邪悪な存在で、その素性は謎だらけです。危険な捕食者でもあるので動きもそれなりに恐ろしげでなければいけません。一方、体型は奇妙です。右腕が長く重そうで、両足は(鉤爪のような足先は特に)とても細くて脆く見えるので、移動するときの動きは多少不自然・不安定でなければおかしいでしょう。

もう一つ心がけていたのが、フィドルの脳は頭ではなく胸にある「檻の中」に存在している点です。ものを考えるのが檻の中にいる邪悪な存在ならば、頭部はある種の飾りとして扱うことができますから。檻の中のそれは物理的には存在していません。ただし狩猟欲求が高まった時には、檻を抜け出して獲物に襲いかかろうとする二本のおぞましい腕が見えます。

カカシというコンセプトはフィドルスティックスにとって非常に重要なものなので、アイドル時のアニメーションには象徴的なT字ポーズを取るように作り、さらにランタンが揺れるアニメーションを加えています。

古代の邪悪を可視化する

Jason “Riot Lanky Tree” Chisolm、VFXアーティスト: 緑色は特に恐怖を想起する色ではありません。シャドウアイル出身者は別ですが(それなら恐ろしい色だと思うでしょう)。ただフィドルスティックスはあの最果ての島からやってきた存在ではありません。「ヤツ」はあなたの警戒心がもっとも薄れた瞬間に現れる邪悪なので、カラーパレットもそれを反映したものに作り直す必要がありました。最初に新コンセプトを公開した時に気づいてくれたプレイヤーの方もいらっしゃいましたが、大鎌の新しいカラーパレットは赤と黒を基調にしていて、VFXも同じカラーパレットを引き継いでいます。赤と黒に決めたのはフィドルスティックスの邪悪さをはっきりと示すためでしたが、チャンピオンのVFXには色以外にも様々な要因が絡んできます。

カラーパレットの決定後、私はスキルセットに通底させる形状と質感を模索し始めました。「形状」選びはVFXの印象を大きく左右するので非常に重要です。新フィドルスティックスではカラクリっぽさと体内に宿る邪悪な存在のコントラストを強調したかったので、不明瞭で有機的な形状、霧状の柔らかな形状、そして危険さを表す刺々しい形状を作りたいと考えました。

これまで見てきたようにチームは様々な変更を加えてきたわけですが、それでもフィドルスティックスの核となる個性は守りたいと考えていました。その取り組みの一例が「クロウストーム」です。クロウストームは非常に個性的なスキルです。画面の専有面積は大きく、効果時間も長く、本体と共に移動し、しかもフィドルは発動中でも他のスキルを使うことができます。また「クロウストーム(直訳でカラスの嵐)」という名前は吹きすさぶ羽根、暗色の風、そして邪悪なエネルギーを想起させます。このため、クロウストームのVFX制作とは視認性と恐ろしさを両立させるための慎重なバランス調整作業となりました。

また、「あの」クロウストームのVFXをアップデートするならば、このスキルが持つ強烈な個性をしっかりと保たなくてはなりません。ならば着手前にしっかりとした計画を用意しておく必要があることは明白です。そこでまず、プレイヤーが「奇襲直前に詠唱している瞬間」と「交戦直後にキルを狙っていく瞬間」に何を感じたいかを掘り下げていきました。そうして詠唱時には、抑えきれないほどの殺意がフィドルスティックスから弾け出る感覚を描こうと考えました。クロウストームを詠唱するのは(多くの場合は)視界外から新たに戦闘に加わる場合なので、発動した後は戦場の注目を集めるはずです。この感覚をしっかりと描き出すため、最初のブリンク部分には悪魔の術式、溢れ出る暗色の煙、わずかな空間の歪み、そして(もちろん)大量のカラスを組み込み、テーマを改めて強調しました。

チャンピオンチームの次のニュースは?

現在はボリベアのVGUと本日公開のチャンピオンロードマップ動画で公開された数体のチャンピオンについて議論を進めているところです。なお、ボリベアについては今年どこかのタイミングでより詳細な情報をお届けする予定です。

皆さんに新しいフィドルスティックスをお届けできることを、チーム一同心から楽しみにしています。リリースまでの間は、ひとまず開発現場からこちらをお届けして記事を締めくくることにしようと思います。



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